保守的な体質のアカデミー それはハプスブルグ家崩壊のもととなった旧体制の縮図でもありました
若い芸術家たちは新しい表現を求めていました
シーレもその例外ではなく 当時芸術家の中心だったクリムトの影響を受けることになります
クリムトはシーレの倍ほどの年があったが 年齢に関係のない非凡な才能を彼の中に見出します
シーレの表現の根源ともいえる性あるいは生の衝動を 感じ取ったクリムトは
彼に自分のモデルだった娘を譲り渡します
多くいるモデルの中からなぜ「彼女」をクリムトが選んだかは 定かではないけれど
おそらくその後のシーレの芸術が「彼女」を求めていくことを見通していたのだと思います
クリムトの あるいはシーレの感性を触発するものを彼女は生まれつき持っていたのかもしれません


しかし 自由奔放な二人の暮らしぶりは 周囲の人々には奇異にうつることも多く 
少女をアトリエに招きいれデッサンをしたりする行為は 多くの理解を得られるものではありませんでした
彼が未成年誘拐未遂で拘束された話はあまりにも有名です

そして彼女の元で多くの絵が生まれていきました

Wally Neuzil   譲り受けられたモデル その娘の名前はヴァリー  4年間クリムトのモデルをした後 シーレのモデルとなった クリムトと ベットをともにしたように 何の疑いも 迷いもなく シーレのアトリエで暮らすことになる ヴァリー 17歳の時だった あらゆる苔が ぼくのところに来て 縮みながら 自分達の生を ぼくの生に寄せかける すべての花々は ぼくを覗き込もうと首を伸ばし ぼくの震える感覚が 内部にこだまを呼び起こす 酸化緑色の花と むずむずした感覚を 呼び覚ます毒花は ぼくをひたすら 高みへ運ぼうとする 1911 書簡より 見つめることは 画家にも可能です しかし 見えてしまうことは それ以上の営みです 1913 書簡より もしぼくが 自分を本当に見ようとするなら 自分自身を直視せねばならぬだろう 己が何を求めているか 何が自分の中で起こっているかを知るだけでなく どれほど真に迫る能力をぼくが備えているかを知ることになるだろう 1911 書簡より 妹 ゲルティは 見つめるだけの存在だったかもしれない しかし ヴァリーは 深くつよく 戦いを挑むように シーレを見つめかえした 彼女は いつの場面も臆することなく 目を見開いて  シーレをみつめ ゆさぶり 愛し そして その後ろにひそむ 死を見通してた 二人の営みは 死のふちでしか感じることのできない 生の輝きだったのかもしれない 性の中に 生を見出し ヴァリーの中に 新しい命を夢見た シーレにとって 性は生そのものであり 彼の命の激情は 常に性の中にあった そしてそれが 彼の芸術 そのものとなった 四年の間 シーレとともに暮らした後 従軍看護婦として 戦地の赴き シーレの他界する前年にこの世を去った
                                     
シーレは 多くをヴァリーから与えられ ゲルティから旅立ちました ゲルティがモデルと思われる絵は ほとんど一人で描かれますが 自らをヴァリーととも描いた絵は多くあります 二人が描かれたとしても それはシーレにとっては自画像だったかも知れない・・ シーレに心を寄せ またシーレも心惹かれたエディットの出現によって 二人の暮らしは終わりを迎えることとなります 聡明なエディットは 言葉巧みに三角関係をたちきります シーレは結婚後もヴァリーとの交際を望み ヴァリーを引き止めますが ヴァリーは シーレの元を去ります