FIGURE U in rainbow 
レオナルドダビンチは何を与えたのだろうか














レオナルドダビンチというと最後の晩餐やモナリザの作者としてとても有名です
彼は絵画技法において 遠近法の完成をもたらし スフマートと言われている技法を編み出しました
スフマートとは「煙のような」という意味で 境界線のないぼやけた描写法のことです
完成された絵はもとより 彼が当時描いた素描は 多くの画家たちの創造力に刺激を与えました

受け継がれていく技法 1

    

三枚の同テーマの絵を並べましたが 一番自然に近い感じ 目に見える感じに近いのは真ん中の絵です
左より ピエロ・デ・フランチェスカ  ヴェッロキオ パティニール が描いた「イエスの洗礼」の絵です

フランチェスカは 初期ルネサンスにおいて ドナテロやマサッチョに続き遠近法を学んだ画家の一人です
この絵でもイエスの後ろ中央に遠近法の消失点を正確に置いていますが 絵の表現方法は稚拙で硬い感じを受けます
パティニールは 北方ルネサンスに属し 世界風景画という風景画成立の初期に位置する絵を描きました
イエスと洗礼者ヨハネの後ろに広がる世界は 線遠近法よりも空気遠近法を重視して描かれています
前景中景後景と画面を区切ることで すこし現実に見える世界とは違った空間を表現しています

真ん中の絵はヴェロッキオ作ですが この絵が描かれた当時の弟子であったレオナルドが一部を描いたというのは有名な話です 
左にいる天使と背景をレオナルドが描いたとされています
初期ルネサンスにおいては 背景と前景(人物)のつながりの処理方法として 窓枠や額縁を使ったり
岩などを置くことにより空間の表現に合理性をつけていました
しかし 若きレオナルドが描いた天使と背景のつながりは 私たちが見えるように自然に描かれ 
その描き方は それまでの画家ではなしえなかった表現だといわれています
背景としての風景画に長けていた北方の画家たちは俯瞰図の視点を織り交ぜて背景を描きましたが
彼らにとっても地平線に消えていく背景は 学ぶべき所がが多いものでした

当時の師であったヴェロッキオはこの天使を見て 筆を持つのをやめたという逸話は
この天使たちが 今までに見たことのないすばらしいできばえだったことを物語っています
すこし振り向いた様子 柔らかい髪 すけるような肌は この絵の中で別空間のように感じます
それらの表現は当時の画家たちの目標ともなっていきました


受け継がれていく技法 2 

   

レオナルドはフスマートという表現方法を用いたはじめの画家といわれています
上に並んだ4枚の絵に描かれた人物の肌の色合いにや顔の表情にそれが見て取れます
洗礼者ヨハネの表情はフスマートの技法によって なんともいえない不思議な笑みをたたえています
また 盛期ルネサンスからマニエリスムへの移行としてミケランジェロの裸体像が取り上げられますが
彼以前に レオナルドはもっとやわらかい形で 目に見える感覚を重視しながら
解剖学に基づいたねじったポーズを 多く描いています
「洞窟のマリア」に描かれたヨハネとイエスや レダの周りにいるキューピッドたちは
赤ちゃんとは思えないほどの筋肉を持ち 不思議な無理なポーズをしています
しかし私たちがそのことに気がつきにくいのは やわらかいフスマートのタッチがそれらを包み込んでいるからです
レオナルドのこのイエスたちに比べると ミケランジェロの描く赤ちゃんのイエスは 非常に不自然に見えます
レオナルドは画家として ミケランジェロは彫刻家として 自らを称していたのがわかるような気がします
ミケランジェロは彫刻の立体表現が絵画の質感表現よりも愛し レオナルドはその逆でした

このような独特の人体表現(フスマートの利用)と並んで 背景に描かれた風景も非常に革新的なものでした
現実にあるのだろうと思えるくらい写実的でありながら どこかなぞめいた様子を漂わせています
「洞窟のマリア」の後ろに見える景色は 特に意味ありげな様子を伝えています


レオナルドの絵を見た画家たちは 自身の心に深く印象づいたものを熟成させ 自分のの表現方法に取り入れて行きました
ルネサンスの後に続くイタリアの画家たちはもちろんのこと 北方の画家たちも レオナルドの影響を受けていきました
特にマセイスや レオナルドの影響を 自らの北方ルネサンスの技法を巧みに融合させた画家でした
「不釣合いなカップル」にある女性の不思議な笑みは 北方の超写実技法から離れ レオナルドの影響が色濃く見えるとされています
ボッスの描いた人物群像が うごめく人間の様子だけでなくそこから生まれて来る濃密な空気を感じさせてくれるのは
レオナルドのこの素描をどこかで見ていたのではないかと 美術研究形は推測しているようです


      

受け継がれていく技法 3

  

レオナルドは 多くの素描を残しています
素描は はじめは後世の人にただの下書きの用に思われていましたが
美術史の研究が進むにつれて 素描の中に画家の創意や工夫が見られることがわかってきました
そして当然その研究を待つまでもなく どの時代においても画家たちは先人の素描から多くのものを学びました
レオナルドの人物素描は解剖学に忠実に描かれたものがほとんどですが 物理的なものだけを描いたわけではありませんでした
マリアがイエスの死を悼むのは ある意味では非常に表現しやすいわかりやすい「悲しみ」の表現でした
しかし 人間の心というのはもっとさまざまな思いが重なり合っているものです
言葉には表せないような せつなさやか悲しさや喜びや あるいは憎しみや妬みやおごりの心を 私たちは持っています
レオナルドは そういった複雑な人の心を巧みな表現方法で描き出しました
上に並べた三枚の素描は 後続の画家たちに大きな影響を与えたといわれています
レオナルドの表現方法は絵画の役割を 宗教の代弁者としてだけでなく 人間の心の代弁者としてのものにしました

この前二枚のグロテスクな醜いまでの表現は 完全に神からはなれた私たちの心のあり方を表現しています
人間が瞬間に見せる心 人と人の間に生まれる重苦しい空気 そういったものは レオナルド以前には描かれないものでした

三枚目のエステ候イザベラ妃の素描は イザベラ本人がレオナルドに依頼した肖像画の下書きでした
この素描を描く前にレオナルドはチェチエイアガッレラーニを描いています
少し振り向く若きチェチリアは当時の人たちにとって それまでに見たことのない絵でした
ただの人物紹介としての肖像画が主流だったのに対し チェチリアの絵は彼女の性格や彼女の投げかける愛をも表現しました
チェチリアの絵は 彼の恋人が自分の寝室にに置く絵としてレオナルドに描かせた絵でした
この絵は見る側にいとしさを思い起こさせるほどのできばえとして広まり レオナルドの名声をなお高めました
レオナルドのチェチリアの肖像画を見たイザベラが それをとても気に入り彼に依頼したのでした
でも依頼された肖像画は完成されることはなく 最終的に彼女はティツィアーノに描かせることになります

このイザベラの素描が少しぎこちないのは 体がスリークォーターなのに顔がプロフィールで描かれているからです
この素描は女性肖像画が確立されるまでの過程が見て取れる貴重なものだとされています
それまでの肖像画は 必ずメダリオン形式の完全横向きプロフィールでした
それは感情を表すものでなく 描かれた人の権威や権力を表すものでした
北方ルネサンスの伝統のスリークォーターがメッシーナによりイタリアに定着しレオナルドに受け継がれました
レオナルドはスリークォーターの構えにすこし振り向いたポーズをとらせることで 
絵を見るものに画中の人物の心の動きを伝えるようにしたのだと考えられます
完成されたチェチリアの絵はそれを成功させました
イザベラデステは自らの権力や権威を表したいためにレオナルドにプロフィールを要求したのではないかと思われています
しかしレオナルドの描く女性の美しさ 心の動きを感じさせる女性は プロフィールでは描ききれないものでした
スリークォーターの振り向いたポーズこそ レオナルドの編み出した人物表現でした
幾枚かのレオナルドの女性肖像画の頂点として 普及の名作モナリザが生まれたのでした
モナリザが描かれる数年前 この素描に感銘を受けたベリーニは一枚の絵の中に美しいマグダラのマリアを描きました
少しの表情の硬さは残るものの それまでのヴェネチアの色彩表現に加え新しい人物表現が見て取れます




         


ベリーニによる「聖会話」の絵です
聖母子とその左にいるカテリナの表情は硬く ベリーニの描く多くの女性のそのままです
しかし右にいるマグダラのマリアは 彼女たちとはっきりと一線を画しています
レオナルドほどのなぞめきはないものの 物思いに沈む人の心の機微を描き出しています
ベリーニがレオナルドから吸収したものが ジョルジョーネやティツィアーノに受け継がれていくことになります

 


+++++piture introdution+++++

Leonardo da Vinci

The Baptism of Christ...1472-1475 with Andrea del Verrocchio 

The Virgin of the Rocks...1482-1486
St. John the Baptist...1513-1516
Leda (copy- the original does not survive)
John the Baptist (with the attributes of Bacchus)...1513-1516

Grotesque Portrait Study of Man...1500-1505
Five Grotesque Heads...1490
Isabella d'Este...1500

Others

The Baptism of Christ...Piero della Francesca/1442
The Baptism of Christ...Parinir, Joachim/1515
Landscape with St. Jerome...Parinir, Joachim/1515-1524
Ill-Matched Lovers...Quentin Massys/1520-1525
Cupid Carving his Bow...Parmigianino/1532-1534
St John the Baptist...Agnolo Bronzino/1550-1555

****...Quentin Massys
Christ Carrying the Cross(2)...Hironymus Bosch
The Ugly Duchess...Quentin Massys/1525-30
Virgin and Child between St. Catherine and St. Mary Magdalene...Giovanni Bellini/1500


+++++++++++++++++++++++++++


 おまけ +++++++
レオナルドダヴィンチの絵の中で 私は結局この二人の天使が素朴で素敵だなと思う
レオナルドダヴィンチはなぜすごいのだろう・・私はあまり彼の絵は好きではなかったのだけれど
ここ数回の講義で聞いていた多くの画家のレオナルドからの影響を整理してみると
好き嫌いとは関係なく やはりすごいんだなと改めてわかったしだいです
やっと自分がスタートラインに立った気がした・・





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