美しさは祈りの中に

不空絹索観音

うすくらいお堂のなかに 浮かび上がるようにたっていらっしゃる観音さま
とても大きくて 堂々としている
観音さまのなかでも 格が上に位置している
観音像は女性的なものを想像しがちだけれども これは とても男性的で
生命感に満ち溢れている

おしゃれで 頭につけたがとてもすばらしい
細工が細かくて 冠の中央に如来像が拝されている



何年も前 その冠だけが 国立東京博物館 に来たことがある
凄い人で 何を見に言ったのかわからないほどだった
友人と 冠でかざられていない観音さんにあいに行こう と話していたことがある
行ったような気がしているが・・・ よく考えると行っていない
たぶん 螺髪(ぼつぼつの髪)でなく 結い上げられた髪であったと思う



月光日光両菩薩を従えて 何年もの間 法隆寺の三月堂(法華堂)に住まわれている

昨年春に 奈良に行った時に 会いに行った
観光シーズンにずれた季節で 人影もすくなく 堂守りのおじさんと ゆっくり話ができた

いろいろな話の中で おじさんに「この像 なにかおかしいと思わないか」といわれた
鈍感な私は どこがおかしいのかわからなくて すぐに降参した

・・・光背の位地・・・ たしかにおかしい
ふつうならば像の頭の もう少し上のほうまで伸びているはずの光背が 随分ひくくついている
確かに足元を見るとこれまた 台座まで光背がかかっていて おかしいな感じだ
つまり どこかのお堂からこちらのお堂に引っ越された時に 堂内に入りきらないで
光背の支柱を短く切られてしまった ということなのだそうだ

きっとどこかの解説書でも読めば 載っている知識なのだろうけれど
いつもこの像と一緒にいる方からそのことを聞けたことが
なぜか とても得をしたような気持ちになった



元の位置に光背がついている姿を見てみたいと思った
きっと もっと のびのびとした 大きな像であっただろうと想像するのも また楽しい




仏像の作られ方について

この像は 乾漆像です
乾漆像とは 木や土で骨組みを作って そのまわりに漆を染み込ませた布を巻いて乾かしたものの上から
木屑と漆をこね合わせたものを 塗って 手や指や顔の表情をつけてあるもののことです
形が出来上がったところで もう一度漆で色をつけていきます

像の中心になっているものが土の場合を 脱活乾漆造り といい 木の場合を 木心乾漆造り といいます
乾漆像でもっとも有名なものの一つは なんと言っても阿修羅でしょう



これらの像が作られた 飛鳥 奈良時代までは 仏像も いろいろな作られ方をしていました
銅像 塑像 乾漆像 木像 いろいろな物があります
銅像 塑像 乾漆像は プラスの発想(土をつけていったり 金属を注入したりします)ですが
木像は マイナスの発想(形を作り出していく時に 木を削り取ると言う意味において)です

私たちが仏像といって思い出すのは 木像が多いのではないでしょうか
実際に 木像のほうが有名なものが多いです
それは 日本にとっては やはり仏教は外来宗教であると言う事が 関係しています
つまり 古来より「木霊・・こだま」という言葉があるとおり 木に霊性を求める神道的な発想が わたしたちの中にあるということです
そのことが 「仏像をつくる」という精神的な行為と重なったと考えられているのです
霊木の力を借りて 仏像を作り出していくことを 仏師たちは最良の方法にしていったのだと思います

木を削っていくことで「形」を探り当てていくと言う事が 私にも とても「祈り」に近い行為のように感じられます

そして 祈りは美しさの中に…
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