湯坂道(鎌倉古道)
2006.11.25


箱根湯本から浅間山まで 箱根旧街道と並行する形で 鎌倉時代に箱根を越えるための道があった 今は すっかりハイキングコースになっているが  石畳があったり 当時を思い起こさせてくれるような素朴な素敵な道だった よく晴れた深まりつつある秋の中 ひとりであるいた古道はほんとうに 素敵な道だった     箱根湯本の駅を降りて 国道を宮ノ下の方に向けて歩いていくと旭橋がある この橋は古くからの石橋として 県の文化財になっているらしい しばらく 車に追われるように歩いていくと 湯坂道入り口の道標に行き当たった その入り口はとても細い上り坂だったが すぐに古木の中をぬって行くような道がつながっていた 旧街道のように並木や足元が整備されてはいない道だ 年代を感じさせるような木がうっそうとしていて ある所は日の光をさえぎったり ある所は やさしい木漏れ日をおとしてくれたりしている      私が 山歩きを好きなのは 景色の変化が楽しいからだ 富士山には 一回は行きたいと思うけれど どうやらガレ場の中を歩くらしいから  きっと飽きてしまうばかりではないかと思う この古道は ちょっと歩くだけですぐに木々の様子や 足元の景色が変わっていく まだ 紅葉の時期には早いのか それとも紅葉する木がないのかはわからないが ちょっと期待していた紅葉に出会えなくて残念だなと思って歩いていた なだらかだけれども 長く続くのぼりの道を歩いていたら 少し開けた場所に出て そこの空を見上げたら 淡いきれいに色づいた葉が 日の光に輝いていた   わずかずつでも一歩ずつ 高度を上げているのだろう だんだん黄色や赤の色が鮮やかになってきて 秋にいっぱい包まれた幸せな気持ちになれた 足元では 落ちた枯れ葉がカサカサと音を立てて 耳にも心地よかった 山歩きの楽しさのひとつは 自然を体で感じられることだ 目や耳や肌や 自分の感覚が日常とは違うものに触れて心がすっきりしていくのを感じる ススキに囲まれた道では さやさやとやさしい音がしていた   ちいさいものたち 山を歩いていると ずいぶんと寒がりな私でも登り坂では体が温まってくる ふと足元を見れば日のあたらない道には たくさんの霜が下りていた 秋の色は 赤や黄色だけではない 花たちが実を結んだ セピアカラーの綿毛たちも 秋のきれいな色を見せてくれる 今年の初めに見た長谷川潔の綿毛の版画を思い出した 自分の見た時の綿毛たちと 写真になってしまった綿毛たちでは 何かが違っている もっとうまく撮れればいいのだけれど・・・ 浅間山の小さい頂上 足元近くの小さい世界を楽しみながら なだらかな小道をしばらく歩いていたら 気がつけば 浅間山の頂上にたどり着いていた     鷹巣山まで 次のピークである鷹巣山には あっという間に着いてしまった この短い道も それでも鮮やかな紅葉を楽しみながら 穏やかな秋を満喫できた 鷹巣山頂上では 反対から登ってきた俳句か何かの会の方たちに出会った 今まさに どこの山に行っても中高年花盛り ほんと 中高年ハイカーって多い ・・・私もその中のひとりだと思うと なんだかすこしちょっと自分にがっかりする 別に時流に乗って山歩きを始めたわけではなかったのだけれど・・・     飛龍ノ滝を経て 畑宿まで 鷹巣山から 来た道と反対の斜面は少し急な下り道であった よく人は 下り道は嫌いだというけれど 私は下りが好きだ 汗をかくことも少ないし ひざの痛みさえ気をつければ 弾みをつけて下りていける ただ 石畳や木の階段は滑りやすくて それを注意しながらい下りなければいけないのは面倒だ かなり背の高い木々の間を抜けながら 木漏れ日を楽しみながら下りていくと 湯坂道入り口という道標のあるところにたどり着いた  その先は県道になっているようだったが 私は左の山の道を選んで畑宿へ下りることにした   この道の下りは 大きな岩があったりしてかなり危ない行程になった こういう道は面白い 多少これくらいのどきどきがないと ちょっと物足りない かなり下りたなと思ったところに滝があったので それが飛龍ノ滝だと思った よく見ると流れの先には景色が開けていたので ここは滝の落ち始めるところなのだとわかった 飛龍ノ滝の全景を見るには もっと下りなければならないということだった 道標にしたがって 木々の合間を縫うように下りていった (二本の木の間に遠景が見えるのだが カメラの質 私の腕によって 何がなんだかわからない写真だ) 崖に沿うように作られた木製の柵を頼りに下っていくと 岩がごつごつした男性的な滝が現れた これが飛龍ノ滝だ 夏にも滝を巡りながら山に登ったけれど 滝の音を聞きながら歩くのもまた 楽しいものだ この滝は 名前のごとくうねうねと点在する大きな岩を水が龍のように流れ落ちていた    こんなかっこいい滝にお目にかかれるとは思っていなかったのでうれしかった あとは 畑宿にむけてひたすら下り 畑宿から奥湯元まで林道を歩いて 日帰り温泉「天山」を目指した あまり険しくなく かといって平坦で飽きるということもなく 楽しく秋を拾いながら ひとり山歩きを楽しみ 至福の時をすごした わがままばかりの私でも それなりに日々の生活のストレスがある 日常のさまざまな垢が汗となって噴き出して 身も心もすっきり爽快な気分になれる 山歩きはデトックスだ (2006年 秋 虹 記す)