ウィンスロップコレクション 乱 雑記


会う予定にしていた人が、熱を出して予定が流れた。
来週会うことにしたが、その日は私が西美に行く予定にしていた日だ。
また、上野に行くのがのびてしまうのもいやなので、急遽、雨の中、上野に向かうことにした。
雨足はあまり強くないので救われる。美術館はすいていた。

パンフレット以外の情報を持って、美術展に行くことは少ない。
ちゃんと調べれば、きっと見落としも少ないと思うが、それよりも、
知らずに行って「出会う」のが、私には楽しい。
今回はモローなどが宣伝に使われていたが、その他にすごい絵がたくさんあった。
私は、「ベアータベアトリクス」に会えたのが、涙が出るほどうれしかった。
モデルになったロセッティの妻シダル(愛称リジー)は、私の憧れの人・・・・。
ロセッティは、実はあまり好きではない。人には興味があるが、絵は好きではない。
今回もずいぶんたくさんロセッティの作品があったが、ちょっと私には「濃い」。
今回来ていたベアトリクスは、水彩でさっぱりしていて、とてもよかった。
唇とつむった目が、ほんとうにきれいだった。
絵の保存状態がひどく残念だった。

ラファエル前派ではミレイの小作品が非常によかった。彼は、私は宗教画家だと思っている。
ハントは、もともとあまり好みの絵はなかったが、今回そのことを再確認した。
バーンジョーンズは、イギリスを代表する画家だが、あまり興味はなかった。
でも今回、出展数も多く、色々なパターンの彼の絵を見て、いくつかとても気に入ったものができた。
「ウェスタリスの焔」という題の肖像画だ・・・肖像画と言うのか・・・
人によったらラファエル前派をそう呼ぶように「美人画」としてくくってしまうかもしれない。
でも、私には、そのようには見えない。

おそらくこの絵のモデルは、バーンジョーンズのファムファタル(運命の女性)だろう。
この時期の画家は、自分の憧れ女性、理想の女性を、思い描いて、絵を描いた。
当然、実在のモデルにしているが、その奥に、生であるとか死であるとか、
画家の心の深淵にあるものを、女性に対する思いに託して、描いたのだと思う。
「ウェスタリスの焔」のモデルは娘マーガレット、他の絵にもいっぱい登場している。
そのどれもが、頼りなげな不安な顔をして、心もとなげに描かれているが、
この「ウェスタリスの焔」の彼女は、ひじょうに、すっきりと何かを思い切ったような
あるいは、すべてを捨て切ったような、穏やかな顔をしてうつむいている・・・それがいい。
彼の絵ではとても有名な「パンとプシケ」「海底」も来ていた。これには感激だった。
今まで画集で見ていた時は、平たい感じがしてすきではなかったが、
実物は、筆のタッチが思いのほか力強く、かといって絵を邪魔することなく、バランスのいい絵だった。
ぬきんでた力はないが、内に向かう力が感じられた。
物語をこま漫画のように描くいくつかの連作があるが、あれは力がなくて好きではない。
非常に繊細な画家だと思う。パンの座る足元のアイリスの花が美しかった。
ボッティチェリを見出したラファエル前派の、こまやかな心が伺える。

ドラクロア ジェリコが一枚ずつ来ていた。
あまり予備知識のない画家だが、とりあえず動物の躍動感はものすごいものがあると思った。
おそらく彼らの頭はストップモーションが利くのだと思う。
瞬間をとらえて、激しい時間の流れを感じさせる画家だと思った。

モローの絵も、ずいぶんと出展されていた。ちょっと、細部の描き方が、病的な感じがした。
細かい表現はすきなのだが、彼のそれを見ていると、私の胸にはざわざわしてくる。
でも、自分の絵の一番見せたいところを発光源にして描いているのが、とても斬新に感じられた。
「キマイラ」はよかった。というよりこのテーマの絵をはじめてみたので気に入った。

ジョセフムーアの絵はきれいだった。やわらかい光がきれいだった。
アルマタデマの実物を見たくなった。もっと光がたくさんあって、明るいのではないだろうか。

ラファエル前派の絵は、ほとんどが金色に塗られた額で飾られていた。
金は好きではないけれど、今回の絵たちは、あまりその金が邪魔に感じられなかった。

アングルは、肌の描き方が異様にきれいだった。でも私にはそれだけだった。
「黄金時代」は、裸体の群像だが、どこかにどこかで見た彼の絵の女性がいた。

出品された絵は、とても気に入ったが、展示方法がよく理解できなかった。
テーマ別に分類して展示されているらしいが、分類の境界線があいまいな気がした。
「東方」とか「具現」とか「墜落」とか、分類に脈絡がなさ過ぎる。
抽象的な言葉でしかくくれないなら、年代で分けたり作家ごとに分けてくれたほうが数倍いいと思う。
・・・・と思うけれど・・・・



michelin